オ ピ ニ オ ン


◎主張(第362号・2008年4月号)
         根本的なことを考えよう
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  今年の入学式には、誰もが注目する本学の卒業生が講演者となった。それは、京都大学iPS細胞研究センター所長の山中伸弥先輩だ。日本で一番、ノーベル賞に近い科学者と言われている。
多くの人が、山中先輩のことはご存知だろうが、本学医学部を卒業したということは、意外に知られていなかったのではないだろうか。一応、本紙の二〇〇八年一月号の一面で、山中先輩を取り上げている。
講演の様子は、本当に「謙虚」だった。また、山中先輩の話に、新入生をはじめ、家族の方も、のめり込んでいった。
山中先輩が、iPS細胞で注目されるまでには、順調な道のりではなく、臨床医の挫折から始まり、本当に失敗の連続だったようだ。
そんな山中先輩が大事にされている言葉が、「塞翁が馬」。そして、海外で研究をされていた時に教えてもらった言葉である「Vision and hard Work」。
人生の中には、その時は、どう考えてもよくないことだと思ったとしても、時が経ってみると、そのおかげで今の幸せがあったりする。山中先輩の人生は、まさにその通りだった。
苦しい時、物事がうまくいかない時は、自分の心を放っておくと、自分を必要以上に責めてしまったり、他人に当たってみたり、不平不満の言葉にまみれてしまったり・・・自分の発想、五感、四肢五体すべてが、自分中心に、そして悪い方向に使われていることがほとんどだ。
だが、山中先輩は、「苦しい時ほど、わくわくする」と思うようだ。その時は本当に苦しい環境だとしても、それは必ず次につながってくるものだ、と思うらしい。
この発想は、言うことは簡単だが、実際に苦しい環境に立たされると難しい。そこで大切に思うのが、山中先輩が新入生に向けて伝えた、もう一つの言葉だ。
日本語に訳すると、「ビジョン志向になって、一生懸命やれ」ということ。
日本人というのは、勤勉な国民と言われている。しかし、ビジョンや生きている目的というものが明確ではない。仕事は一生懸命するのだが、それを何のためにしているのかがはっきりしないため、路頭に迷う人が多いようだ。
言い換えれば、海外の人は、ビジョンを持っているとなるわけだが、では、そのような違いを生み出したのは、一体何なのだろうか。
一つの考えとして、軍国主義で価値基準が決まっていたところに、一気に「個人の権利」が入り、「権利」や「自由」、そして「責任」というものを考えてこなかったことがあるのではないだろうか。
戦後、日本は自由競争の中、世界有数の経済大国になったわけだが、何のための経済大国になろうとしたのか、という深くて広いビジョンがなかったのではないだろうか。
そのため、基準が「お金」になり、お金を集めるための仕事となる。本来、仕事は国や世界のためのものであって、お金を集めるツールではないはずだ。
「生きる」ということなどを考える時間が少なく、偏差値ばかり求める教育をしてきたしこりと言えないだろうか。
今こそ、書物や歴史から「生きる」といった根本的なところを考えていく必要があるのではないだろうか。この混迷としている状況も、後に「あの時期があったから今の幸せがある」と言えるためにも、人間のあるべき姿を考えていく大学生活にし、社会に出てからも、大いに活躍できる人材が今の世界には必要なのではないだろうか。


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